学長メッセージ
寛容の精神と柔軟な対応力
近年、人々の国際移動はますます活発化しています。日本を例にとると、出入国在留管理庁の統計によれば、日本への外国からの入国者は、2000年が約527万人でしたが、その後急速に増加し、2020年から3年間はコロナ禍で入国者数は大きく減少しますが、2024年には約3,678万人と過去最多になっています。つまり、日本に来る外国人の数は四半世紀ほどで約7倍になっています。また、在留外国人は2024年6月末で約359万人です。ちなみに2024年7月1日の横浜市の人口が約377万人ですから、日本には横浜市の人口と同じくらいの外国人が暮らしていることになります。これらの数字は、国際文化交流がすでに「目指すべき未来」みたいなものではなくなり、喫緊の大きな課題となっていることを示しているでしょう。私たちは今、望むかどうかにかかわらず、外国の人々とともに暮らしていくことを真剣に考えなければなりません。
学習院女子大学は、国内の他大学に先んじて1998年に国際文化交流を専門的に学べる大学として開学しました。本学国際文化交流学部には、日本文化学科、国際コミュニケーション学科、英語コミュニケーション学科の3つの学科があり、所定の単位を修得することで、それぞれ日本文化、国際コミュニケーション、英語コミュニケーションの学位(学士号)が取得できます。学位の名称は異なりますが、3つの学科は「国境・民族・文化をこえ、人類の平和と文化の発展を希求し、地球的視野から人類が歩んできた過去及び進むべき未来を研究教授し、その深奥を究めるとともに、社会と手を携えつつ、人格の陶冶と情操の涵養を図り、時代を先導する女子の創造的リーダーを育成する」(学則第1条)という共通の目的をもっています。
本学は特に国際文化交流を実践的に学ぶことを重視していますので、外国を訪問して国際文化交流の現場を知る国際文化交流研修、ホームステイをしながら外国語を学ぶ海外語学研修、日本の伝統文化を体験的に学ぶ伝統文化演習などを学科の枠に制約されない共通科目として開講しています。英語だけでなく他の外国語の科目も多く開講しています。外国の26の大学と協定を結んでおり、交換留学を推奨しています。北米や西ヨーロッパ、オーストラリアはもちろん、ポーランド、ルーマニア、チェコ、エストニアなどの東ヨーロッパ、韓国・中国・台湾・タイ・ベトナム・ラオスといったアジアの国・地域にも協定校があります。また本学には、カナダのレスブリッジ大学と本学の両方の学位が取得できるダブルディグリー制度もあります。(ダブルディグリー留学を除いて)留学しても4年間で卒業できるのが本学のカリキュラムの特長です。
大学院国際文化交流研究科では、アートマネジメント、国際協力、日本学・比較文化、国際関係・地域研究の各プログラムで研究を深め、より専門的な知識と技能を習得できます。
本学で学んだ卒業生は、国際文化交流の現場で、また企業や政府・自治体などで活躍しており、彼女たちの人間性(特に寛容の精神と柔軟な対応力)が高く評価されています。そのことが本学の誇りです。
学習院女子大学長 時安 邦治