担当教員からメッセージ

国際社会の現場における本物の体験を

畠山 圭一 教授

担当教員:畠山 圭一 教授(国際コミュニケーション学科)
ワシントン・セミナーは平成14年(2002年)の夏、本学の「国際文化交流の担い手として国際社会で活躍できる女子のリーダーを育成する」という設立理念の具体化として、国際社会の現場における本物の体験を学生に提供するプログラムの一つとして始まりました。
前年(2001年)の9.11米中枢同時多発テロ事件から、まだ一年も経っていない時でした。研修で訪れたペンタゴンではテロで破壊された施設の修復がまだ済んでいない生々しい廃墟が残っていました。またプログラムの一環として実施されたニューヨークの国連日本国代表部での研修後の自由行動では多くの学生が犠牲者を追悼するため貿易センタービルの廃墟を訪問したりしました。
そんなテロの記憶の生々しく残る緊張感のなかで、21世紀という新たな世紀の世界を担うという気概をもって参加した研修生の態度は真剣そのもので、それは、まさにフロンティア精神を地で行くプログラムでした。
当時と研修形態は変わりましたが、ワシントン・セミナーの精神は第一回目から一貫しています。それは「国際社会を支え導くリーダーとなる。そのために世界の先頭に立って活躍する人に会い、時間と体力が許す限り精一杯、自らの資質を養う努力を怠らない」という精神です。
以来、14年が経ちましたが、SARSのために中止を余儀なくされた一回を除いて毎年に開催されています。ハードスケジュールを承知の上で毎回20人前後の学生が参加し、修了生の数はすでに260人を超えています。
学生を研修指導してくださる方々は、最高責任者を含むいずれも各分野の第一線で活躍するトップ・リーダーであり、真剣に世界や国家や社会のために人生を奉じている方々です。この研修を通して学生はそれぞれに尊敬すべき人と出会い、様々な感化を受け、本物に接することで、自らの生き方や将来像を真剣に考えるようになります。
二週間の研修中に、学生の取り組み姿勢や表情は見違えるほどたくましく精悍なものになっていきます。そこには、もはやリーダーを憧れとして仰ぎ見るのではなく、リーダーとしての自分の姿を明確に心に描き、そのための努力を惜しまないという決意が感じられます。
そうした学生一人一人の中に起こった変化は、その後の進路が示していると思います。
修了者の中には、国際協力に従事することを決意して海外の大学院に進学するもの、国際協力銀行などの国際援助を担う政府系機関に勤務するもの、経済や文化をめぐる国際紛争解決のための法務に従事するもの、文化施設に奉職して文化事業・交流事業を担当するもの、公務員となって国際化の推進を担うものなど、研修で得た志を直接職業選択に結びつけている例も少なくありません。また、それ以外でも、セミナーでの体験は十分に生かされて、修了生は皆、自らがどう社会に貢献するかを真剣に考えながら職業選択に行っています。その意味で、ワシントン・セミナー修了者は着実に国際社会を支える力として成長しています。やがてはそれぞれの職域・職場で中心的存在となり、ますますその真価を発揮すると期待しています。